二週間ほど前の写真塾撮影会で、新宿区の落合を歩いた。林芙美子記念館・佐伯祐三アトリエ記念館などを見学したが、猫寺と呼ばれている自性院は歩くコースから少し外れていて、立ち寄ることができなかった。そこで暑い夏の盛りではあるが、今回その自性院を訪れてみた。
地下鉄大江戸線の「落合南長崎駅」から5分ほど歩くと、「自性院会館・猫地蔵堂 入口」と記された大きな案内板が見えてくる。参道への入り口では、猫の大きな像が迎え入れてくれる。
山門は、一つ手前の角を左に折れて少し進んだ所にある。こちらは鮮やかな朱塗りの門である。
新宿区西落合にある「自性院」は、猫寺とも呼ばれている。猫寺と呼ばれるようになった経緯は、ウェブサイト「猫の足あと」の「新宿区の寺院」の項に以下のように記されている。
猫地蔵の縁起は、文明9年(1477)に豊島左衛門尉と太田道灌が江古田ヶ原で合戦した折に、道に迷った道灌の前に一匹の黒猫が現れ、自性院に導き危難を救ったため、猫の死後に地蔵像を造り奉納したのが起こりという話が伝えられている。
地蔵堂には秘仏の猫地蔵が祀られているそうで、2月3日の節分会に開帳されるそうだ。
出典:猫の足あと
http://www.tesshow.jp/index.html
自性院
http://www.tesshow.jp/shinjuku/temple_wochiai_jishoin.shtml
地蔵堂の壁面にはめ込まれた「猫地蔵堂建立之記」の石版には、建立の経緯が以下のように記されている。
この御堂は 自性院住職第二十三世永潤和尚 並 大澤家先祖代々諸霊菩提の永代供養を願って建てさせていただきました
真夏の昼下がりとて、猫の姿は全く見えなかった。せっかく猫寺を訪れたのに猫の写真が撮れないのではなんとも残念な結果となってしまう。ところが、やはり猫寺だけのことはある。どこからともなく黒猫が現れ、猫地蔵堂前の日陰に身を横たえてくれたのだ。
かつて太田道灌が道に迷って難儀している時に、黒猫が現れて道案内してくれたという話が当寺に伝わっているそうだが、今、目の前に現れた猫も黒猫なのだ。奇縁を感じずにはいられない。乳首がはっきりと見えることからすると、子育て中か、あるいは子猫が乳離れしてから間もないのかもしれない。
2014年01月29日
写真集「田代島猫景色」
写真:田中良直
発行日:2010年3月19日
ネコの島「田代島」で暮らすネコたちは、ある時は陽だまりでのんびりとまどろんだり、ある時は魚をめぐる争いで野生の凄みを見せたり、そんなさまざまな姿を見せてくれる。この写真集は、田代島のネコたちが見せるたくましい生命力を、さまざまな角度からとらえて伝えてくれる魅力あふれるネコの写真集である。
田代島は宮城県石巻の沖合、牡鹿半島の西に位置する小さな島である。ネコ好きの人なら、たぶん知らない人はいないだろう。それほど有名な、ちょっと有名になりすぎたネコの島である。
去年の11月、CNNが「観光名所よりネコが人気の場所」として六カ所をあげ、田代島もその中の一カ所に選ばれた。
「6 places where cats outshine tourist attractions」
By Donald Strachan, for CNN
November 11, 2013
ちなみにネコが人気の六カ所は以下の通りである。
Rome's kitty ruins(ローマのネコ遺跡)
Japan's cat islands(日本のネコの島々)
Tashirojima(田代島)
Ainoshima(相島)
Houtong, Taiwan
Kalkan Kats (Turkey)
Hemingway's cats, Florida Keys
ネコ好きの人の中には、この六カ所以外にもあの場所が入っていないではないかと文句をつけたいと思っている人もいることだろう。かく言う私もその一人だが、どこが足りないのかは胸の中にしまっておくことにしよう。
posted by 里実福太朗 at 00:33
| ■里ふくろうCAT
2013年12月03日
神楽坂にゃん子に誘われて
食事場所を探しながら神楽坂の裏通りを歩いていた。近ごろは赤城神社近くの「小諸そば」でとることが多く、ワンコイン前後でそれなりの味のお昼をいただくことができて重宝していたが、たまには神楽坂らしいお店でランチを食べてみようか、そんなことを思ってあてもなく歩き出したのだった。
以前にも食事場所を探して神楽坂の町を歩きまわったことがあった。しかし決めることができず、結局「小諸そば」に戻ってしまったことがあった。今回も決めかねて路地を歩きまわることしばし、突然「ミャー」という鳴き声に呼び止められた。
声の主を捜し求めれば、立て看板の後ろからこちらの様子をうかがっているニャン子がいた。首に赤いおしゃれなバンダナを巻いているところからすると、家猫なのだろう。
危害を加える人物ではなさそうだと見極めたのか、物陰から出て来るとスタスタと歩き出した。時おり振り返り、あたかも後をついておいでと言いたげな視線を送ってくる。こちらとしても望むところなので、誘われるままに後を追っていったが、小さな公園が見えるあたりで姿を見失ってしまった。
公園は高台にそびえるビル群に囲まれていた。かろうじて一つ設けられている公園と高台をつなぐ狭くて急な階段がなければ、行き場のない袋小路となっていただろう。そういう空間の底辺から見上げていると、いまにも建物を支えている壁が崩れ落ちてきそうな錯覚さえ覚える。
階段を上って高台に出れば、そこに延びる小道には石が敷き詰められ、整然と区画整理された住宅地とは異質な雰囲気を醸し出していた。さきほどの猫はどこに行ったのだろう、石畳の路地の先にヒョコッと顔を出し、こっちだよと視線を送ってくれそうな気もするが、人通りのない道が続くだけで猫の子一匹も現れなかった。この道がどこへ続いていくのか定かではないが、引き返してあの窪地に戻るのは避けたい。ともかく行けるところまで行ってみることにした。
先ほどの願いが通じたのだろうか、しばらく歩みを進めて行くと、道の先にこちらを見つめる猫の姿があるではないか。
「やっと来たね、待ってたよ」
そんなふうに言いたげにも見える。見失った猫と同じように首に赤いバンダナを巻いていたが、別の神楽坂ニャン子だった。
誘われるまま後についていくと、見覚えのある路地に出た。そこには「ル・ブルターニュ」というレストランがある路地で、何回かその前を通ったことがあった。フランス北部ブルターニュ地方の伝統料理であるガレットを扱う店である。
この路地に足を踏み入れるたびに昼時の店内を覗くと、多くの人で席が占められ、その中には外国人の姿も見えた。フランス人なのかもしれなかった。いくどとなくそば粉を使ったガレットを食してみたいと思ってはみたが、予約するか長時間待たなければ無理だということが予想され、あきらめて通り過ぎるのが常だった。
猫はその「ル・ブルターニュ」の店頭近くで、急に寝ころびこちらを見上げて甘えるような誘うようなしぐさをした。それが何を意味しているか判然としなかったが、場所が場所だけに、その店に案内してくれたような気がして、また以前から気になっていた店だったので、店内を覗いてみた。お昼の時間をだいぶ過ぎていたせいか、いくつかの空席もあった。これなら待たずに済むかなと思った矢先、店内からスタッフが出てきて、待たずに食事を取ることができますよ、と案内してくれた。
かくして食事場所が決まったのだった。ここまで一緒に来たくだんの猫は、大胆にも道の真ん中で身繕いをしていた。
以前にも食事場所を探して神楽坂の町を歩きまわったことがあった。しかし決めることができず、結局「小諸そば」に戻ってしまったことがあった。今回も決めかねて路地を歩きまわることしばし、突然「ミャー」という鳴き声に呼び止められた。
声の主を捜し求めれば、立て看板の後ろからこちらの様子をうかがっているニャン子がいた。首に赤いおしゃれなバンダナを巻いているところからすると、家猫なのだろう。
危害を加える人物ではなさそうだと見極めたのか、物陰から出て来るとスタスタと歩き出した。時おり振り返り、あたかも後をついておいでと言いたげな視線を送ってくる。こちらとしても望むところなので、誘われるままに後を追っていったが、小さな公園が見えるあたりで姿を見失ってしまった。
公園は高台にそびえるビル群に囲まれていた。かろうじて一つ設けられている公園と高台をつなぐ狭くて急な階段がなければ、行き場のない袋小路となっていただろう。そういう空間の底辺から見上げていると、いまにも建物を支えている壁が崩れ落ちてきそうな錯覚さえ覚える。
階段を上って高台に出れば、そこに延びる小道には石が敷き詰められ、整然と区画整理された住宅地とは異質な雰囲気を醸し出していた。さきほどの猫はどこに行ったのだろう、石畳の路地の先にヒョコッと顔を出し、こっちだよと視線を送ってくれそうな気もするが、人通りのない道が続くだけで猫の子一匹も現れなかった。この道がどこへ続いていくのか定かではないが、引き返してあの窪地に戻るのは避けたい。ともかく行けるところまで行ってみることにした。
先ほどの願いが通じたのだろうか、しばらく歩みを進めて行くと、道の先にこちらを見つめる猫の姿があるではないか。
「やっと来たね、待ってたよ」
そんなふうに言いたげにも見える。見失った猫と同じように首に赤いバンダナを巻いていたが、別の神楽坂ニャン子だった。
誘われるまま後についていくと、見覚えのある路地に出た。そこには「ル・ブルターニュ」というレストランがある路地で、何回かその前を通ったことがあった。フランス北部ブルターニュ地方の伝統料理であるガレットを扱う店である。
この路地に足を踏み入れるたびに昼時の店内を覗くと、多くの人で席が占められ、その中には外国人の姿も見えた。フランス人なのかもしれなかった。いくどとなくそば粉を使ったガレットを食してみたいと思ってはみたが、予約するか長時間待たなければ無理だということが予想され、あきらめて通り過ぎるのが常だった。
猫はその「ル・ブルターニュ」の店頭近くで、急に寝ころびこちらを見上げて甘えるような誘うようなしぐさをした。それが何を意味しているか判然としなかったが、場所が場所だけに、その店に案内してくれたような気がして、また以前から気になっていた店だったので、店内を覗いてみた。お昼の時間をだいぶ過ぎていたせいか、いくつかの空席もあった。これなら待たずに済むかなと思った矢先、店内からスタッフが出てきて、待たずに食事を取ることができますよ、と案内してくれた。
かくして食事場所が決まったのだった。ここまで一緒に来たくだんの猫は、大胆にも道の真ん中で身繕いをしていた。
posted by 里実福太朗 at 23:46
| ■里ふくろうCAT