2020年09月16日

ツクツクボウシの起承転結

庭で聴くツクツクボウシの声は、今期初めてのものだった。そして、もうちょっと練習が必要だな、と感じさせるような不安定な鳴き方だった。

子供の頃は、ツクツクボウシの鳴き声が聞こえてくると、もう夏休みも終わりだ、早く宿題を片付けないと…こんなふうに急に焦り出すのだった。ツクツクボウシは、いつも8月の終わり頃に鳴き始めるセミだった。

ところが今年の夏は、8月が終わり9月に入ってもツクツクボウシの鳴き声が聞こえてこなかった。もっとも今年の夏休みは、新型コロナのせいで例年より1〜2週間ほど早く終わったから、たとえいつも通り8月の末に鳴いたとしても、その頃にはもう学校が始まっていたわけだ。その声を聴いて、まだ終わっていない宿題を抱えて焦り出す生徒はいなかったはずだ。

梅崎春生という作家が、ツクツクボウシの鳴き方についておもしろいことを書いていることは、かなり前に一度取り上げていたな気もする。繰り返しになるかもしれないが、彼によれば、ツクツクボウシの鳴き方は、きちんと「起承転結」という構成に従っているというのだ。

鳴き始めの「ジュクジュク…」が「起」、次の「オーシンツクツク、オーシンツクツク……」が「承」、そして「オニオーシー…」が「転」、最後の「ジュー」が「結」ということなのだ。

この指摘を頭に置いて鳴き声を聞いていると、なるほど確かに「起承転結」に従って鳴いているように思われてくる。単調な鳴き方をするセミが多い中で、ツクツクボウシはかなり独特な鳴き方をする。梅崎春生さん、そのことに気づくとは慧眼だね、と思わずにいられない。

庭で鳴いていたツクツクボウシの声を録音しておきました。梅崎さんが言うように「起承転結」になっているかどうか、ご自分の耳で確かめてみてください。



posted by 里実福太朗 at 23:40 | ■里ふくろう通信