2019年06月07日

台湾のタクシードライバー

三年ほど前、初めて台湾を訪れたとき、松山空港から台北市内までタクシーで移動した。台北市内はかなり渋滞が激しく、車が止まったまま動かないことが何回かあった。そんな折、南国特有のかなり激しいにわか雨が降り出した。タクシーの窓から、乱雑に連なった車の洪水を眺めていると、異国に来んだなという感慨がわいてくる。

「雨あめ降れふれ♪もゥとフレ〜♫」
聞こえてきたのは「雨の慕情」、ただ八代亜紀の歌声ではなく、タクシードライバーが歌っていたのだった。「もっと降れふれ」などと歌ってほしくはない雲行きではあるが、日本から来たお客さんへのサービスかもしれないと思い返し、台湾華語で「上手ですね」はどう言うのだろうと考えてみても分かるはずもなく、そのまま繰り返し聞こえてるそのフレーズを聞いていた。

その時は客へのサービスなのかもしれないと思ったのだったが、何回かタクシーを利用するうちに、そうではないのかもしれないと思うようになった。すべてのドライバーにみられる傾向ではないのかもしれないが、お客のことはあまり眼中になく、どうもマイペースにふるまう面があるようだ。

今回、台北のバスターミナルに向っているとき、信号待ちで停車していると、運転席の窓を下げ、路上で物売りをしている人に大声で話しかけ、なにやら小さなバナナの房状の白いもの買い求め、それをルームミラーにぶら下げた。室内にいいニオイが漂ってきた。

業務中に何かを買い求めるなどという自由な振る舞いは、日本ではまず考えられないことだが、台湾ドライバーはそのようなマイペースな面があるといってもいいのかもしれない。そう考えると、あの「雨降れドライバー」も、お客さんへのサービスとして歌ったのではなく、雨降り渋滞のイライラを解消するためか、退屈しのぎに歌っただけだったのかもしれない。

あとで調べて分かったことだが、あの「小さなバナナの房状の白いもの」は、ハクモクレンのつぼみの束だったようだ。台湾の路上でおじさん・おばさんがよく販売していて、芳香剤としての効果があるそうだ。
posted by 里実福太朗 at 14:39 | _【new】2019台湾紀行