2014年08月22日

「アイスバケツチャレンジ」手法の問題点

かつて「幸福/不幸の手紙」というものがはやったことがあった。その手紙には、受け取った人が、指定された人数分の知人に同じ内容の手紙を出せば幸福になる、あるいは不幸になるという内容の文言が記されていた。手紙を受け取った人が何となく薄気味悪さを感じて、指定された人数分の手紙を出してしまえば、その手紙の数はねずみ算式に増えて膨大な数となっていく。仕組みとしてはネズミ講と同じで、理屈では無限連鎖で増加していく。しかし人口は有限なのだから、複数回手紙を出す人が現れない限りいずれは行き詰まるはずではあるが、手紙を受け取って出した人は、被害者であると同時に加害者となってしまうのだから、放置すれば大きな社会問題となる。

その後、インターネットが日常的に使われるようになると、「幸福/不幸の手紙」のネット版とも言うべき「チェーンメール」が登場した。メールの転送機能を使えば、簡単に複数の人に送ることができてしまうので、その伝播の早さは「幸福/不幸の手紙」の比ではない。「幸福/不幸の手紙」や「チェーンメール」は、ともにネズミ講(無限連鎖講)的な問題点などを含んでいて、不参加の呼びかけなどもあって次第に下火となった。

最近「アイスバケツチャレンジ」という運動がいろいろなところで行われている。ALS協会が始めた募金イベントで、もともとはアメリカで始まり日本でも急速に広まり話題となっている。

『「ALSアイスバケツチャレンジ」は、ALS患者と患者団体を支援する募金イベントです。』
『頂いたご寄付は、ALS患者や家族の療養と治療研究のために、大切に使わせて頂きます。』
(日本ALS協会のウェブサイトより)
http://www.alsjapan.org/-article-705.html

この募金イベントは、ALS患者と患者団体を支援することを目的としているということだから、もちろんそれに関しては何ら問題はない。しかしその手法に問題はないだろうか。「アイス・バケツ・チャレンジ」とは、いったいどのような活動なのだろうか。

【ルール】
『バケツに入った氷水を頭からかけている様子を撮影し、それをフェイスブックやツイッターなどの交流サイトで公開する、あるいは100ドルをALS協会に寄付する、あるいはその両方を行うかを選択する。そして次にやってもらいたい人物を3人指名し、指名された人物は24時間以内にいずれかの方法を選択する。』
(ウィキペディア「アイス・バケツ・チャレンジ」より)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8#cite_note-SankeiBiz-6

日本ALS協会のウェブサイトの「お知らせ」に以下の記事が載っている。
〔「ALSアイス・バケツ・チャレンジ」ご寄付のお礼と報告〕
『皆さまへのお願い  「アイスバケツチャレンジ」で、冷たい氷水をかぶることや、高額の寄付をすることなど、すべて強制ではありません。 皆様のお気持ちだけで十分ですので、くれぐれも無理はしないようにお願いします。』
(2014年08月21日)

これを受けて、上記ウィキペディアには、『ただ、氷水を頭からかけることや寄付をすることが強制ではないことには留意する必要がある』というコメントも載っている。

「幸福/不幸の手紙」も「チェーンメール」も強制ではなかった。出す出さないの判断は受け取った人に任されている。しかし無言の圧迫感から、出してしまった人もいたことだろう。「アイスバケツチャレンジ」も強制ではないとしても、善意からであるとしても、指名された人は人間関係などの諸々の関係性を考慮して、チャレンジするという判断に至るということもなきにしもあらずであろう。

そして、何よりの問題点は、『次にやってもらいたい人物を3人指名し、指名された人物は24時間以内にいずれかの方法を選択する』という手法にある。これはいわゆるネズミ講の無限連鎖的な手法と同じなのである。指名された人が次の3名を指名して、さらにそれぞれの人が3名ずつ指名すれば9名、という具合にねずみ算式に増えていくのである。

やはり「アイスバケツチャレンジ」は、「幸福/不幸の手紙」や「チェーンメール」と同じような問題点を含んでいると考えた方がよさそうだ。このような手法に頼らずとも、ALS患者さんを救済する道が広がっていけばいいのだが。

posted by 里実福太朗 at 13:15 | ■里ふくろう通信